習熟の心得(自学の心得その弐)

 
習熟の心得今回の記事も重要な事が盛り沢山。やはり長くなりましたが、参考にしてくれると嬉しいです。
前回は段取りの心得(自学の心得その壱)について説明しました。目標達成のためのスケジューリング方法と、問題が起こった時のリスケジュール術をメインに説明しました。重要なキーワードとして、分析・計画・調整の3つが出てきましたが、それぞれ説明できますか?わからないときは上記リンクから確認しておくことをオススメします。
さて、ここからが本日の本題です。納得のゆく計画を立てられたら、いよいよ実際に勉強してゆきます。選んだテキストを身に付けていくわけですが、これを効率よくやるにはちょっとした工夫が必要です。まず初めにやるべきは、自分がそのテキストのどの部分をどのように勉強すべきかを知ることです。同じテキストをやるにしても、どこに重点を置くべきかは人によって異なります。基本問題からあやしいのか。それとも応用問題からか。習熟の程度にも違いがあるでしょう。全くわからないのか。それとも理解はできているが即答できない状態なのか。習熟プロセスを最適化するには、まず自分が「何をすべきか」を明らかにしましょう。次に実際にテキストに取り組んでいくわけですが、まずは「わからない・理解できない」を優先的に潰していきましょう。理解しさえすれば勉強ができるようになるわけではもちろんありません。しかし、理屈無用の丸暗記ではなく、しっかりと理解することによって初めて知識を自分のものにする土台を築くことができます。納得のいかないところがなくなったら、その知識を自由自在に使いこなせるよう、しっかりと再現訓練を行います。「自由自在に使いこなせるまで」です。ここまでやり抜いて、知識はようやく自分のものになります。勉強は何をやるかと同時にどうやるかがとても大切です。もし効率よく知識を身に付けたいのであれば、この選別・理解・再現のプロセスを徹底することをオススメします。

選別(習熟の心得その壱)

選別(○・×・△)テキストを身に付ける際にまずやるべきことは、やる必要がある問題とそうでない問題を選り分けることです。新しいテキストに取り組み始めたタイミングでも、書いてある問題すべてがわからないということはないはずです。(仮にそうだとすれば、それはあなたにとって難しすぎるテキストです。別のものに変えましょう)すでに身に付いていることを、漫然と何回も繰り返すのは時間のムダ。問題を○×△で分類し、メリハリの効いた勉強ができるよう準備しましょう。
1. ○
まずざっと問題を解いてみましょう。そのうち、解答の根拠を説明できて、かつ即答できるものに○印をつけましょう。初回でこれが出来るということは、その問題に答えるのに必要な知識は完全にあなたのものになっていると考えて差し支えありません。解き直し・チェックは大切ですが、あまり多くの時間を割くのはやめておきたいところです。他の問題に時間を割いたほうが賢明です。ちなみに、テキストを解く目的はその知識を身に付けることにあるので、全問に○印を刻むことが出来て、初めてその一冊をマスターしたということになります。(一回二回ざっと解くだけでは、テキストをマスターしたことにはなりません)
 
2. ×
根拠はわからないし、もちろん即答もできない。そんな問題には×印をつけましょう。これらの問題に必要なのは「なぜその答えになるのか」を理解・納得することです。解説を何回も読み込み、なるべく自分の頭で考え抜くこと。(どうしてもわからなければ、教師等に聞きましょう)わからない状態と向き合い、地道に思考を積み重ねてゆくのはなかなかしんどい作業です。しかし、これを自分に誠実にしっかりと出来るか。それがこれからの出来を大きく左右します。地道に行えば、他の問題への応用力が付く上、考え抜く力も向上させることができます。このことを肝に銘じて、まずは解答の根拠を理解することに努めましょう。自分の中で納得し、根拠が言えるようになったら、×の上から△を書き込みましょう。
 
3. △
根拠は言えるけど時間が掛かる。即答できない。そんな問題には△印です。こうした問題に必要なのは即答できるよう再現訓練を繰り返すことです。勉強はスポーツと似たところがあります。たとえば逆上がりを例に取ると・・・小学生になると否が応でも逆上がりにチャレンジすることを強いられます。なかなか上手くできなかったりすると、そのタイミングで周りがアドバイスをくれますよね。学校の先生、お父さんお母さん、兄弟、友達。曰く「お腹を鉄棒から離すな」。幼少時の素直な時分、やり方も理解したからきっとできるに違いない。いざやるぞ!・・・しかし、これが一回で成功することはむしろ稀ではないでしょうか。アドバイスを信じ何回も挑戦と失敗を繰り返す中、初めての成功を体験し、更なる繰り返しの中で、やがてその一回限りの成功を当たり前に変えてゆくわけです。勉強も同じです。やり方を知った上でそれを再現しようとする。失敗を重ねつつも段々と近づいてゆく。そうした過程を通して、知識は本当の意味で自分のものになります。一々考えるまでもない、「当たり前」。知識の常識化・血肉化が起こるわけです。ここまで来れば○印です。次の問題に進みましょう。

理解(習熟の心得その弐)

理解(因果・抽象具体・比較)選別が終わったタイミングで、次にすべきは×を△に変えることです。つまり、ゆっくりでもいいから根拠が説明できるよう、問題をしっかりと理解するということです。その際に使えるのが因果・抽象具体・比較の考え方です。「なんだこれ。よくわからん・・・???」と行き詰まったら、いずれかを切り口に知識を整理してみましょう。きっと突破口が開けるはずです。
 1. 因果
原因と結果。新しい知識が出てきたら必ずその理由もセットで勉強することが大切です。その答えになる理由、公式の成り立ち、それがその問題で使える理由、なぜその歴史的事件が起こったのか、などなど。学校で習うことには、ほとんどの場合理由がくっついてきます。(ときに教える側が省く場合や、1+1=2のような約束事もありますが・・・)少なくとも「なんでかわからないんだけど、その出来事が起こってね」とか、「理由なくその公式が使えるんだ」なんて教え方はまずしません。十中八九知識には原因がくっついて来ます。ここをあやふやにしないようにしましょう。しっかりと調べ、自分の頭で考え、わからなければ教師に聞くこと。一つ一つの知識を丁寧に解きほぐしていくことが重要です。アンチ思考停止!!「なぜ?」がわかるからこそ、それそのものがしっかりと理解でき、応用が効き、忘れにくくなります。勉強する上での基本スタンスとして、因果関係を追うことをしっかりと心掛けましょう。
 
2. 抽象具体
まとめ(=抽象)と例(=具体)。あなたが中学生以上なら顕微鏡を使ったことがあると思いますが、抽象と具体の間を上手く往復することは顕微鏡のピントをあわせる行為に似ています。ピントを絞り過ぎると、細かいところのチェックはできますが、今自分がどこの部分を見ているのかがわかりません。詳しく見たいところもすぐに探せないです。かと言って緩いままだと、全体像はつかめますが、詳細な情報が入ってきません。顕微鏡を使う時に大切なのは、ピントを緩めて全体を把握した後で、より詳しく知りたいところへ照準を合わせてゆくことです。
勉強にも同じことが言えます。まずは、自分が何を勉強するのかを大まかに知っておきましょう。たとえば、不定詞の単元を勉強するとします。まずは、テキストをざっと見渡してみましょう。すると「不定詞というやつにはどうやら3つの用法があるらしい」と気付くはずです。さらに詳しく見てゆくと、そのそれぞれに訳・意味・使用法などの説明や、その具体例として英文が載せられたりしているはずです。まずはこのように構造を大づかみにしてみましょう。それが出来たら、細かい説明を理解してゆきます。不定詞は「toと動詞の原形」で作ること。その用法には名詞的用法・形容詞的用法・副詞的用法の3つがあること。それぞれはどういった点で異なるのか。名詞的用法の訳はどうなり、たとえばそれを使ってどんな英文が作れるのか。形容詞的用法や副詞的用法はどうなるのか。大切なのは、前から後ろへ漫然と読んでゆくのではなく、全体と部分の関係性を意識しながら階層構造を頭の中に再構成することです。たとえば例文だけ暗唱できても、それが何の具体例であるかを理解していないのであれば何の役にも立ちません。逆に、ルールだけ覚えても、それに付随する例文が瞬間的に出てこなければ、実際には使えません。大切なのは構造を理解し、どの階層の知識も引っ張り出せること、あるいは推測できるようにすることです。
ちなみに、目次をコピーして手許に置いておき、見出しを書き込んだりしながら進めてゆくと、今勉強している公式やルールなどが全体の中でどのような意味を持つのかが確認しやすくなります。良ければ試してみて下さい。
 
3. 比較
似通ったもの同士を比べること。それぞれの特徴を際立たせることで理解の助けになる。似たものが出てきたときって、混乱しませんか?たとえば、現在完了の完了用法の意味(過去形と同じじゃない???)だったり、恒等式(方程式と何が違うの?)だったり。他にも色々ありますが、こういう場合は両者を並べてみて、二者間の違いのみに着目しようとすることで理解できることが多いです。試しに、現在完了完了用法と過去形を並べてみましょう。両者とも、「〜した。」という日本語に訳出できるところは共通点ですね。ですが、過去形は文字通り過去についての情報しか言えないのに対して、現在完了は現在も含んだ説明が出来る点に違いがあります。というよりむしろ、それが伝えたい情報は今現在の状況です。たとえば、I lost my key.では過去において失くしたのであって、今現在どうなのかははっきりとわかりません。しかし、I have lost my key.では、過去において失くし、さらに今現在もその状況が続いている。つまり、今も見つかってないという状況を表せるわけです。このように、似た事柄に着目して比較を行うと、それぞれの特徴をより詳細に理解してゆくことが出来ます。
さらに、これを利用して、覚えるべき量を圧縮することも可能です。たとえば、現在完了と過去完了を比べてみましょう。両者とも完了形であるというところが共通であり、時制においては相違がありますよね。すでにあなたが現在完了や、現在と過去の違いを理解しているのであれば、それらをもとにして過去完了の意味を推察することができるわけです。たとえば、現在完了は「ある時点から今までを表す」とすでに理解しているならば、過去完了は「もっと昔時点から過去のある一点までを表す」と推し量ることができるわけです。あとは、それを確認し、慣れるだけです。過去完了の意味を1から覚えるということをせずに済むので、学習の効率化が図れるわけです。

再現(習熟の心得その参)

再現(想起・分割・反復)×印の理解をしっかりと終わらせ、今や残るは△と○だけ。このタイミングでは、△を○にするために、再現訓練を行いましょう。なかなか思うように成果を出せない人の多くは、十中八九ここに問題があります。理解しただけで満足し、本当の意味で知識を自分のものにできていないのです。即答できない知識なんて何の役にも立ちません。しっかりとやりこみ、自分の思う通りの結果を手にしましょう。キーワードは想起・分割・反復です!
1. 想起
思い出すこと。再現訓練はテキストを見ながらやっても意味がないです。まず再現すべき内容を理解し、その上でなるべくテキストを見ずに再現訓練を行いましょう。理解したことを記憶にとどめる→何も見ずに思い出してみる→瞬間的に再現できるかを確認する→出来ないところを中心に覚え直す→見ずに思い出す。こうしたサイクルを徹底的に回しましょう。特に重要なのは、「見ないで」再現しようとするところです。なお、スラスラ完璧に再現できるようになってからも数回は繰り返すことで、「血肉化」が行われます。記憶を強化するには自分の脳味噌に負荷を掛けてなんぼです。覚えられなくて苦しくても、それは脳みそが成長している最中なんだと考えて、しっかりとやり抜きましょう。
 
2. 分割
一度に再現する範囲を絞ること。たとえば、身に付けるべき問題が三十問あるとします。この時、一度に三十問の再現訓練を行うのではなく、まずは初めの第1問~第5問を即答状態に→6〜10を即答状態に→1〜10→10〜15→16〜20→10〜20→1〜20→20〜25→25〜30→20〜30→1〜30。このように、自分がやるべきことを細かく分けて各個撃破しつつ、徐々に再現できる範囲を広げてゆき、最終的に全範囲をスラスラと再現出来るようにしましょう。
 
3.反復
完璧になるまで繰り返すこと。上の内容とも被りますが、とにかく反復しましょう。テキストを見ないでも解答・解説がスラスラ暗唱出来るようになることが差し当たっての目標です。そして、それが出来てからも、そこからさらに数回は再現を続けましょう。特に考えもせずにスッと出てくるようになったものが本当に使える知識です。応えるまでに少しでもタイムラグがあるものは、いざという時に使えませんし、いつの間にやら記憶から消えていってしまうものです。「これだけやればいいかな」のさらに一歩先を目指して、最後まで徹底的に繰り返しましょう。ちなみに、ここをしっかりとやり切れなければ、難しいテストでは点数に反映されないことが多いため、労力は掛けたのに結果が芳しくないという結果になります・・・。完璧になるまでとにかくやり込みましょう!!