kick himとkick at himの違い[青稲塾そこ知り英文法064]
問題
問題。以下の英文を訳し分けましょう。
- Oliver kicked him.
- Oliver kicked at him.
答え↓
- Oliverは彼を蹴った。
- Oliverは彼めがけて蹴った。(しかし当たらなかった。)
解説
他動詞と自動詞の違いは目的語の有無によって見分けられます。したがってkick himのkickは他動詞、kick at himのkickは自動詞ということになるのですが、ところで、他動詞と自動詞にはどのような意味的特徴があるか知っていますか?他動詞の特徴は「他者への影響」です。
- He moved the chair.
彼はその椅子を動かした。 - He has a blue pencil.
彼は青いペンを持っている。 - He studies Japanese everyday.
彼は日本語を毎日勉強する。
このように、「主語が目的語に影響を与えるという関係性」や「主語が目的語を含んでいる・取り込むという関係性」を表すのが、他動詞です。対して、自動詞が表すのは「自己完結」的な行為・状況です。
- He moved to the chair.
彼はその椅子のところへ移動した。 - The movie is interesting.
その映画は面白い。 - He smiled.
彼は笑った。
共通するのは、「主語だけで出来ること」という点ですね。このように、他動詞なら「他者への影響」、自動詞なら「自己完結」を表す傾向があるのですが、当然「他動詞と自動詞のどちらとして使用するか」が動詞の意味決定に影響を及ぼすことがあります。たとえばrunには「走る」「経営する(=走らせる)」、moveには「動く」「動かす」、getには「なる」「得る」という意味があり、それらが「他動詞or自動詞」によって変化することは有名な話です。それでは、chew「噛む」は「他動詞or自動詞」によってどのように変化するのでしょうか。ちなみに、chewを自動詞として使用する場合は前置詞onを付加してchew on itのように使い、他動詞として使うならchew itのように使います。
- Oliver chewed on the pencil.
前者は自動詞chewと「接触」を表す前置詞onを使っています。自動詞のchewは自己完結的な行為であり、「アゴを上下に動かす」程度の意味しか持ちません。そこにonを組み合わせることにより「the pencilの表面に接触する」というニュアンスが付加されます。合わせて考えると、「表面・一部をかじった」くらいの意味になります。
- Oliver chewed the pencil.
対して後者は他動詞のchewです。他動詞は「影響」「包含」がその核心ですので、この場合はthe pencilが噛まれて変形したり、口の中にすっぽり入っている印象を与えます。よって「口の中に入れて、クチャクチャ(カチャカチャ?)噛んだ」のような意味になるわけです。なかなかクレイジーですね。
それでは、問題に戻りましょう。問題。以下の英文を訳し分けましょう。
- Oliver kicked him.
- Oliver kicked at him.
前者の英文はkickを他動詞として使っていることから、Oliverによって、himが「影響」を受けたことがわかります。よって、この英文は「Oliverの蹴りが命中した。」ということを表します。対して、後者はkickを自動詞として使っていることから、蹴るという行為がOliverの「自己完結」的な行為に終わったということを暗示します。よって、この英文は「Oliverはhimを蹴ろうとした。(命中はしなかった。)」という意味になるわけです。
類題
問題。「溺れる者は藁をも掴む」を英訳すると、正しいのはどちら?
- A drowning man will catch a straw.
- A drowning man will catch at a straw.
答え↓
- 後者。at。
本日のまとめ
- kick himのkickは他動詞。kick at himのkickは自動詞。
- 他動詞の本質は「他者への影響」
- 自動詞の本質は「自己完結」