not more thanとno more thanの違い[青稲塾そこ知り英文法071]

071-not-more-than-vs-no-more-than今日の「そこ知り英文法」はnot more thanとno more thanの違いについてです。比較における否定のお話ですね。具体的にはnot more than, no more than, not less than, no less thanなどに関してですが、対応する言い換え表現はすぐ出てきますか?パッと出てくる人も、覚えるのに相当苦労したのではないでしょうか?実はこれ、冷静に解きほぐしてゆけば、そうそう難しい話ではないのです。そのために役立つのが「文否定と語句否定」に関する知識。最近の記事を未読の方はまずそちらを先に見ておくことをおすすめします。本日のキーワードは「文否定」「語句否定」「比較の差」。
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「文否定」と「語句否定」の基本はこちら↓
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問題

問題。I、youはそれぞれinsaneなのかを指摘して、以下の英文を日本語に訳せ。

  • I'm no more insane than you are.

答え↓

  • 両者ともinsaneではない。「君が狂ってないのと同じように、僕も狂ってなんてないよ。」

解説

「比較級の否定」というと、高校で初めて習うとき多くの人が混乱することで有名な高校英語に置ける最難関地点の一つです。

  • not more than
  • no more than
  • not less than
  • no less than

誰に教わったかにもよりますが、「急にこれらを見せられ、よくわからぬまま以下のように対応表現を覚えさせられた・・・。」なんて経験がある人も多いのではないでしょうか。

  • not more than = at most
  • no more than = only
  • not less than = at least
  • no less than = as much as

理屈もわからぬ丸暗記なので、いつまでたっても定着せず、模試や試験を受けるたびに「・・・。確かこんな感じだよな。文脈的にもそれっぽいし・・・。」と自信なく回答する日々。当然、結果も・・・。ここらでしっかりと身に付けて一歩先に進みましょう。それでは、まずは"not more than"の解説から始めます。まず気を付けなくてはならないことは、このnotは文否定のnotであるということです。否定しているのは語句ではないのです。"not more than"という形で抜き出されることが多いので、勘違いされがちなのですが、このnotはmore thanだけに掛かっているのではなく、more thanが入った文全体の意味を否定・逆転させる働きをしています。

  • He has more than ¥10,000 with him.
    彼は手許に¥10,000より多く持っています。
  • He doesn't have more than ¥10,000 with him.
    彼は手許に¥10,000より多く持っているわけではない。
    →彼は手許にせいぜい¥10,000程度しか持っていない。

「¥10,000より多くは手許にない。」のですから、持っているとしても「最高で¥10,000」までですよね。したがって、これは"at most"「最高で、せいぜい」という表現で置き換えることが出来るわけです。"not less than"に関しても、同様に考えられます。このnotも文否定のnotであり、あくまでもless thanが入った肯定文そのものを否定しています。

  • It costs less than ¥10,000.
    それは¥10,000より安いです。
  • It costs less than ¥10,000.
    それは¥10,000より安いというわけではない。
    それは安くても¥10,000はする。

「¥10,000より安くない」ということは「最低でも¥10,000」はするということですよね。よって、この表現はat least「最低で、少なくとも」を使って言い換えることができます。まとめると、「not+比較級」は文否定であり、意味を取りたい場合は「もとになる肯定文」の意味をひっくり返すだけでいいのです。簡単ですね。さて、次は「no+比較級」です。まずは"no more than"からいきます。 このnoの働きは語句否定であり、文意全体を逆転させるわけではありません。実は比較の程度を表す副詞表現の仲間なのです。

  • He is much taller than I.
    彼は僕よりはるかに背が高い。
  • He is a little taller than I.
    彼は僕よりちょっとだけ背が高い。
  • He is only two inches taller than I.
    彼は僕より2インチだけ背が高い。

tallerの直前にある"much/a little/only two inches"という表現ですが、これらはすべて「どれほどtallerなのか。tallという尺度においてどれほどの差があるのか」をより詳しく説明しています。つまり比較の程度を説明しているわけですが、実は「no+比較級+than」のnoも同じ働きをしています。

  • He is no taller than I.

この文におけるnoはtallerにのみ掛かり、またその差が0だということを表す役割を果たしています。「彼は私と比較して、tallという基準において差が0である」つまり「彼は私と同じくらいの身長だ。」となるのですが、気を付けるべきは使うタイミングです。この英文、実は「想定・予想に反する場合」に使うのです。たとえば、上の例文は・・・

  • He is tall.

「彼は背が高い」と思うでしょう?でもね、「実際はそうでもないんだ。」というタイミングで使います。したがって「(背が高いと思っていたのに、実際は)私と同じくらいの身長だ。」というのがこの英文の正しい捉え方です。なお、「大きいと思っていたのに、実際はそれほど大きくなかった」という予想と現実の落差を含むわけですので、「彼の身長は私と同じくらいしかない。」と少ないニュアンスを含むことになります。"no more than"がonlyで言い換えることが出来るのはこれが理由です。

  • I have no more than ¥2,000.
    たったの¥2,000しかない。

当然"no less than"も同様に考えられます。語句否定であり、「差が0」を表します。予想と現実の違いを織り込むところも変わりありません。たとえば・・・

  •  He gave me no less than ¥2,000.

この例文なら、前提として・・・

  •  He gave me less than ¥2,000.

「くれても¥2,000以下だろうな」と、要は「くれても少ないだろうな」と思っていたのが、蓋を開いてみたら「実際は思ってたよりも多い、¥2,000くれた!」というタイミングで使われます。思っていたよりも多かったわけなので、「¥2,000もくれた」と多いニュアンスになります。これが"as many as"で言い換えることが出来る理由です。以上が、比較級の否定がその同意表現で言い換えられる理由です。

さて、それでは以上の説明を前提に、ここからは「クジラの構文」を説明してゆきます。クジラの構文とは・・・

  • A whale is no more a fish than a horse is.

「クジラが魚でないのは、馬が魚でないのと同じことだ。」を具体例に取り、説明される否定比較の最難関構文です。一般化すると、"S is no more X than Y"「SがXでないのは、YがXでないのと同じことだ」となり、訳語だけで考えようとすると何が何やら・・・。多くの英語嫌いを生んできたであろう文法項目です・・・が、実は上記のno more thanとほぼ同じ考え方で理解できるのです。まず、このnoは語句否定のnoであり、差が0だということを表しています。つまり、A whaleとa horseは「魚類であるかどうか」という基準において差が0。つまり、同程度であるということになります。使われるタイミングも似たようなもので・・・

  • A whale is a fish.

「クジラって魚っぽいなあ」という想定・思い込みがまず前提としてあります。それに対し、「(クジラって魚っぽいなあという思い込みがあるけど、実際は)クジラと馬は同程度の魚類度である。」というように説明する際に使います。当然、「馬が魚ではずはない」わけですから、統合すると「クジラが魚であることは、馬が魚であるのと同じくらいありえない。」という意味になります。つまりこの構文、「一見すると〜っぽいなあ」ということと「ありえないことの具体例」を比較し、程度が同じであると言うことで、その思い込みがありえないことであると説明するときに使われるのです。

それでは、問題にもどります。問題。以下の英文を日本語に訳し、I、youはそれぞれinsaneなのかを検討せよ。

  • I'm no more insane than you are.

クジラの構文ですが、thanの後ろには「ありえないこと」が来るんでしたね。したがって、youはinsaneではありませんし、比較の差が0なので、Iもinsaneではありません。したがって、日本語訳は「君が狂ってないのと同じように、僕も狂ってなんてないよ」となります。

類題

問題。以下の英文を日本語に訳せ。

  • I'm not insane any more than you.

答え↓

  • 「君が狂ってないのと同じように、僕も狂ってなんてないよ」

本日のまとめ

  • not more thanは文否定。文意を逆転。
  • no more thanは語句否定。差が消失。想定と現実とのギャップ。
  • クジラの公式はno more thanと同じように考えれる。

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