『分析』(段取の一)

「上手く『段取』を行うべし」と言われても、今の自分には転用できる成功体験もなく、正直言って何から手を付ければいいのかわからない・・・。そんな時、まず実行すべきは『分析』である。

少ない時間で多くのリターンを得る際の鉄則は『これまで』と『これから』のギャップを埋めるようにルートを配置すること。『目標・実力・資源』の三つの方向性から自己を見つめ直し、最適な『計画』を策定するための材料を洗い出そう。

『目標』(分析の一)

まずは『目標』の分析から始めよう。『理想』を起点に、その達成に必要なことを段階的に細分化してゆくのが大まかな流れである。すなわち、感情から『最終目標』を定め、それを達成するために必要な能力を考えることで『段階目標』を、さらにそれを達成するために必要な行動を考えることで『行動目標』を定めてゆく。

  • 『最終目標』とは?
    「何のために勉強するのか?」という問いに対する回答のこと。達成の成否が明確なものを設定しよう。
    たとえば「今年度の早稲田大学商学部合格」や「来年秋までの英検準一級取得」など。(「頭が良くなる」などは達成の成否を測れないので不適)
    ※辛い時にも「がんばろう!」と前を向き続けられるのは、辿り着きたい場所があるからこそである。『最終目標』は得手不得手による消去法ではなく、自己の『理想』にしたがい、感情的かつ能動的に決定しよう!
  • 段階目標』とは?
    「『最終目標』を達成するために、どのような能力を獲得してゆく必要があるか?」という問いに対する回答のことだと考えてほしい。要は中期目標である。これに関しても、達成の成否が明確になるよう、数字を使い、具体的に設定することが大切。
    この目標の粒度としては、たとえば「12/31までに志望校レベルの英文を分速150語以上で読めるようになること」や、「5月の第一回河合塾全統記述模試で数1A偏差値65以上を取ること」などと考えてほしい。
  • 『行動目標』とは?
    「『段階目標』を達成するために、どの教材をどの程度出来るようになっている必要があるのか?」という問いに対する回答のこと。今まさに片付けるべき短期目標。
    たとえば「システム英単語の1番から1500番までの単語の90%以上について、和訳が即答出来るようにすること」や、「Focus Gold1Aに掲載されている問題のうち、星が3つ付与されているものまで即答出来るようにすること」など。

こうした作業を実際に行うのが初めての場合は、上手くイメージするのが難しいかもしれないので、ここから目標明確化プロセスを実際に行ってみようと思う。大学受験を例に取るが、大学受験生はもちろん、そうでない場合(たとえば資格試験受検生など)も各自の状況に合わせて回答していってほしい。それでは始めよう。

あなたの『最終目標』は何ですか?

「モテたい」とか、「あいつを見返したい」とか、「金持ちになりたい」とかどんな動機でも構わない。自分の心に素直に、可能な限り速やかに決めてしまおう。動機に貴賤はないのだ。ここでは、仮に「憧れの先輩が進学したから」という理由で「今年度の早稲田大学商学部合格」を『最終目標』に据えておくことにしておく。

では『最終目標』達成のために押さえるべき『段階目標』は?

これに答えるには多少の情報収集が必要となるが、まずは焦らず簡単なところから、すなわち形式面から埋めてゆく。たとえば、まずは大学のウェブページや赤本・青本などを参考にして、以下の五点についての最新情報を集めてみよう。

  • 試験科目
  • 科目ごとの配点
  • 最低合格得点率
  • 得点調整の有無
  • 出題形式と範囲

以下は「2021年度早稲田大学商学部(一般選抜・社会科利用)」のものだが、これを参考に各自の志望校情報をまとめて欲しい。

  • 試験科目
    国・英・社(日本史・世界史・公民から1科目選択)
  • 科目ごとの配点
    国(60点)・英(80点)・社(60点)
  • 最低合格得点率
    6割後半(131.35/200満点中)
  • 得点調整の有無
    あり。科目やその年の難易度によるけど、調整を加味すればだいたい7割後半は必要かも?
  • 出題形式と範囲
    国:現代文・古典(漢文あり)
    英:評論・小説・伝記・随筆・会話文など題材が多彩。長文中で、文法・和訳・英訳問題なども出題される。単語数も多く、速く正確な読解力が不可欠。
    日:資料問題・論述あり。近代以前からも出題。近現代のみに絞る学習だと合格は難しそう。

形式に関してはこの程度にして、次は内容に踏み込む。過去問を一年分解き、以下の三点についてまとめよう。

  • 各科目の主観的難易度
  • 問題量と時間のバランス
  • 科目ごとの目標点数

先ほどの形式に関する五つの質問に比べて、内容に関するこれらの質問に関しては、人によって、タイミングによって大きく回答が異なるだろう。また、個別最適化された『計画』は、個々人の状況を正確に把握することによって、初めて成立するものである。よって、以下に示す例は一応の参考程度に考え、各々の正確な現状を把握すべく、しっかりと時間を掛け取り組むことをおすすめする。

※「何がなんだかわからん・・・。わかる問題がない」ということも人によっては当然あるだろう。しかしそれでも「現状では全く太刀打ちできない」ということがわかった分だけ成長だ。「まだやっても意味がない」とか、ビビってウダウダしてるよりも百万倍マシである。ダメでもともと。とりあえず一旦解いてみよう。

※※「直前期に解くモノがなくなる」と心配する声もあろうが、全くの杞憂である。基礎もあやふやな状況で一回さらっと解いたところで、数カ月後には「思い出せるのは大問構成くらい」が関の山である。本格的な過去問演習期が到来した際にも、新鮮な気持ちで挑戦できるに違いない。

  • 各科目の主観的難易度
    国:古典はどうにかなりそう。現代文がむずいかも。
    英:出てくる英文はわりと簡単そうに見える。意味が取れないものはあまりないかな。
    日:むずい・・。細かい。論述しんど・・・。
  • 問題量と時間のバランス
    国:分量が多い気がする。古典には時間が掛けられないかも。
    英:長文が5つある。トータルの分量がえぐい。
    日:論述のせいでギリ・・・。他の問題は即答不可避。
  • 科目ごとの目標点数
    国:英:日:計=45/60:70/80:40/60:155/200(77.5%)

さあ、いよいよ『段階目標』の決定だ。これまでに集めて来た情報を踏まえ、目標達成のために獲得すべき能力を考えよう。英語なら、たとえば以下のようになるだろうか。

  • 中級程度の解釈力
  • 分速120語の速読力
  • 基礎的な英作力

そして、最後に『段階目標』を満たすように『行動目標』を決定する。上記三点を満たすには、どの教材がどの程度出来るようになっている必要があるだろうか?自分なりにしっかりと考えてみよう。なお基礎的な文法・語彙力が完成していることを前提として以下に一例を示す。

これで目標明確化プロセスは完了である。さて『最終目標・段階目標・行動目標』を明確化する全ての問いに自信を持って答えることが出来ただろうか?もしそうであるなら、実は、あなたは相当優秀な層に属している。正直、学習の初期段階において『最終目標』との距離を正確に測れる者は極めて少数派。なにせ、それは未踏破の道行きである。

では、こうした作業に難しさを感じたり、一応できたが自信がないという場合には、どうすればよいのだろうか?

解決策は三つ。

第一に外部指標の活用である。たとえば、模試を一つの目印として活用する。定期的に受検し、その都度弱点を把握、次の模試までにそれらを克服するという過程を繰り返すことで、徐々に『最終目標』に接近してゆくスタイルである。

「志望校と模試の傾向・難易度が異なると、合格までの最短距離をいけなくなる」という反論もあろうが、それでも基礎力が大切なのは言うまでもなく、また模試の順位と志望校合格との間に相関が見られることも事実である。最善ではなくとも、模試の重要性が減じられることはないだろう。

他にもたとえば、これは情報の多く蓄積される進学校に通う者限定になるが、「志望校へ進学した諸先輩方が、校内模試や定期試験でどの程度の成績を修めていたのか」をある程度の目印とすることも出来るだろう。進学説明会の資料を参考にしたり、仲の良い教師や進路指導担当者に卒業生のデータを求めるなりし、先輩をある種のロールモデルとして活用させていただこう。

第二案は先達に力を借りることだ。それは先輩だったり、年上の友人だったり、塾や学校の先生だったり、両親や、あるいはその友人だったりするかもしれない。諸君がその年まで生き、広げてきた『つながり』を駆使し、知識と実績を十分に備えた「この人こそ手本にふさわしい」と思える人物を探し出し、素直に教えを乞おう。成功者は、努力を続ける者には敬意を持って接するものだ。自己の志望に対して誠実に向き合い、日々を送っているのであれば、きっと道は開けるだろう。

そして、最後はとにかく始め、動きながら考えることだ。目的地が多少曖昧であれ、ゴールだと思われる方向に勇気を持って一歩踏み出してみる。「こっちかなあ、あっちかなあ」と歩き回ってみる。そうしているとそのうちに徐々に視界が開けてくる瞬間がある。確かに遠回りになる可能性も大いにあるだろう。しかし、目的地が曖昧だからと、いつまでも歩き出さず、一処に留まり、時間を無為に消費することに比べれば何倍も利口である。少なくとも経験値は貯まり、そしてやがてはその蓄積により、必要な知識と正確な判断力が手に入ることだろう。

『実力』(分析の二)

『目標』を明確化するプロセスを通して、最終的にどこを目指し進むのか、その道中にどのような目印があるのか、すなわち『最終目標・段階目標・行動目標』の三点が明確になった。

このタイミングで次に行なうべきは、どこから始める必要があるか、すなわち自己の『実力』を見定めることであるが、これにあたっては『目標』の明確化に比べ、より一層の注意が求められる。というのも、「どこから始めるべきか」についての判断を誤った結果生じる問題が、『目標』の時よりも一層深刻な被害をもたらしうるからである。

というのも、世には厳しいよりも楽な道のりを歩みたがる者が多く在るわけだが、そのような心根の者達の中には、本来、より一層基礎的なところから始める必要があるにも関わらず、数段上のレベルから取り組もうとする者が現れる。そして、ここに少なくとも二つの致命的問題が生じる。

第一に遅々として進まない状況に絶望し、足を止めてしまう者が現れるということ。自己の目標を定め、「いざ立ち向かわん」と決心した時点では想像もつかないかもしれないが、その無尽蔵に湧き出る泉かと見紛うほどのやる気は、残念ながら極々一時的なものにすぎない。何の燃料も与えず、やる気が延々と持続し続けるというのは人間のさがではないのだ。たしかに初めの数日は持ちこたえるであろうが、しかしそれ以降人の足を前に運ぶのは、達成感という燃料である。長く学習を続ける必要があるのであれば、これが枯渇することのないよう気遣わなければならないのだ。

そして第二の問題点だが、テキストに取り組むことによって本来身につけるべき知識や思考の型が身に着けられない確率が高くなってしまうということが挙げられる。学習の正道を行くのであれば、「まずは基礎となる事柄を確実にし、その次にそれら基礎知識の組み合わせ方を学んでゆく」という順序を守る必要がある。しかし、ここで己の実力が正確に掴めていない者がある種「まじめ」に、たとえば基礎力がない中、応用力養成を旨とした教材を勉強し終えてしまうことがある。喜ばしいことのように見えるかもしれないが、しかし残念なことに、この場合に本来身につけておきたかった応用力が育つことはありえない。なぜなら「基礎的な事実を引き出し、その関係性を整理することによって応用力を身に着けさせよう」というテキスト方針に逆らい、出てくる知識の機械的暗記の結果として、思考の型を身に着けたと錯覚したに過ぎないからである。要するに、教材作成者側としては考えさせることによって思考力を養成しようとしているのに対し、学習者側は考えないことによってその教材をモノにしようとしてしまうわけだ。これで応用力・思考力がつくことがありえるだろうか?

以上二点の理由により、自己の実力を把握せずに、身の丈に合わない教材を選ぶことは避けないといけないわけだが、ここで「だったら『目標』の場合と同じで、先達に力を借りれば問題ないのでは?」と考える者もあるかもしれない。しかし、適切な『実力』の明確化なくしては、それもまた至難の業なのである。

というのも、ゴールラインを踏み超えた者にとって、ゴール周辺の景色は共有されたものだが、スタート周辺の景色は必ずしも共有されているわけではないからである。たとえば、ここに早稲田大学商学部に数学受験で合格したA君とB君がいるとしよう。

A君は中高一貫進学校に通い、高校最後の一年間を受験勉強に費やし、危なげなく現役合格。通ったα高校は定期試験のレベルも高く、教科書章末問題以上の難易度のものがその大半を占める。教科書に掲載されていないことも学校の授業で普通に習い、定期試験にも中学の頃から当然の如く出題され続けてきた。彼にとってそれらの知識は、いわば「常識的な知識」である。

対して、B君は偏差値55程度の高校を卒業し、必死の浪人生活の末にギリギリで合格することが出来た。彼の通ったβ高校は全国で見たときに真ん中より少し上な程度。今回の合格も学校創立以来の快挙である。そんなβ高校の定期試験は教科書の例題レベルの問題が大半を占め、章末問題レベルのものは多くて2割程度。発展的内容に関しては、質問に行けば一応教わることが出来るが、授業内で取り扱うことも、定期試験で問われることも、基本的にはないという有り様である。したがって、B君からすればそれらの知識は勉強への意識が高い者だけが持ちえる『特別な知識』である。

つまり、A君とB君とでは『常識』が異なるわけだが、だからこそ彼らは双方ともに「この知識は自分以外の者にとっても同じように『常識的知識』なのだろうか?」という疑問を持つことさえなく、時に彼らの助言は相手の状況を考えず、無反省に自己の体験を押し付ける、効果の低いものとなりえるのである。要するに「自分はこのレベルから始めたから、質問者も同じレベルからでいいのでは?」というわけで、そこには助言を受ける側の視点を欠いており、結果として指示した内容が質問者にとっては難しすぎたり、時に簡単すぎて全く必要ないものであるという事態が起こってしまう。その結果として何が起こるかは想像に難くないだろう。

では、そのアドバイスをより効果的なものに変えるにはどうすべきだろうか?

ひとつは、最適な人選を行うことである。『十分な実力があり、かつ、自分と近しい経験を持つ者』か、あるいは『自分と近しい経験を持つ生徒を多く志望校へと導いてきた指導者』という手本にふさわしい人物を探し、その恩恵に浴すこと。これが可能であるならば、一番間違いがないだろう。

しかし、配られたカードの中で勝負に挑まなければならないのが人生である。いつも最善が在るとは限らない。ここで『実力』の明確化が役に立つ。もし最適な相談相手が見つからない場合においても、実力明確化がきちんとなされていれば、効果的なアドバイスを獲得する糸口となりうるのだ。

もちろん適切な支援者が見つかった場合にも、情報が多いに越したことはない。いかなる場合においても、自己の『実力』を見極めるという過程は端折らず徹底すべし。

では、『実力』の明確化はどのように達成されるのだろうか?

合言葉は『大から小へ』である。まず大雑把に捉え、徐々に細部を確認する。これを幾度か繰り返す中で段階的に特定を行い、自身の現状を『網羅的かつ詳細』に計測するのである。

以下、英語を例に『実力明確化』の具体的手順を三段階で記す。まず第一に行うべきは各種試験問題で現在のレベルをざっくりと把握することである。中学・高校のいずれのレベルで問題があるのか、以下にある試験問題から、現時点の実力にあったものを用意し、実際に解いてみよう。

  • 志望校過去問
  • 共通テスト過去問
  • 河合塾全統記述模試
  • 定期考査
  • 都立高入試共通問題

『初見・時間内・九割得点』であれば、そのレベルに関しては全く問題ないと言えるだろう。八割だと指導者の判断が必要。七割の場合は志望校の過去問やプレ模試などを除いて「問題あり」だ。対策はそこからスタートする必要がある。

歯が立たなかったものに関しては、当然、その原因も考えなくてはならない。たとえば、語彙、一文の構造把握力、長文全体の構成把握力などのいずれに不足があるだろうか?英文が読めない理由も十人十色である。徹底的に考え抜き、自分の弱点を把握しよう。

また、この段階の注意点として「我々は対象に不慣れであるほど、逆にそれに関係する能力を過大評価しがちである」ということを考慮しなくてはならない。よって、チェックは「これは大丈夫だろう」と考えるものの一段下あたりから始めるとよい。(たとえば「中学レベルは問題ないが、高校基礎レベルに問題がある」と思うのであれば、まずは高校入試の問題を解き、本当に問題がないのか確認しよう)

さて、第二段階では問題箇所を網羅的な問題集の目次を活用し、より詳細に特定してゆく。たとえば「一文一文が正確に読み取れない」ということの原因が「中学二年生レベルの英文法に大きな穴があることだ」と判断したとしよう。その場合に行うべきは、たとえば以下ような、中学英文法が網羅的に掲載されている書籍を活用し、問題点を細かく限定してゆくことである。

まずは目次に目を通すことから始めよう。たとえば前者の場合、p.5からp.8にある目次において、以下のように見出しが並んでいるわけだが・・・

  • 中1レベル
    1. this/that
    2. these/those
    3. what is~?
    4. ・・・
    5. ・・・
    6. ・・・
  • 中2レベル
    1. 過去形
    2. 過去進行形
    3. when節
    4. ・・・
    5. ・・・
    6. ・・・
  • 中3レベル
    1.  従属接を導く接続詞(1)
    2.  従属接を導く接続詞(2)
    3. 間接疑問文
    4. ・・・・・・
    5. ・・・・・・
    6. ・・・・・・

この文法項目のリスト(特に「中2レベル」)に順々に目を通し、そのひとつひとつに対して「自信を持って後輩に説明できるか?」を考えてみてほしい。その結果、上手く説明ができないものがあなたの「弱点単元」である。ここでは仮に「when節」が上手く説明できないことに気がついたとしよう。

すると次に「when節」のページを開き、実際に手を動かし、問題を解き、不足知識を細かく特定する。(問題を解くのであって、解説を読むのではないことに注意!)

もし該当ページに解けない問題が多くあるのであれば、それこそがあなたにとっての『不足知識』であり、今まさに学習すべき対象であるというわけだ。

このような過程を繰り返し実行して、穴がどこにあるのかを特定し、『実力』を明確してゆこう。ここで手を抜いてしまうと、穴が空いたままになる上、適切な助言を得る確率も低くなってしまう。くれぐれも思い込みで飛ばさず、心して取り組もう。

『資源』(分析の三)

『目標・実力』の明確化プロセスを通し、『これまで』と『これから』を把握した。最後に行うべきは、これらをつなぐために活用する『資源』の明確化である。

※ここにおける『資源』とは、受験勉強における最重要資源である『残り時間』のこととし、その明確化についてのみ触れる。

『資源』の明確化について行なうべきは、下記の三点である。順に実行してゆこう。

  1. 一週間分の『行動記録』を取得
  2. 残り期間を考慮し『最大学習時間』を算出
  3. 実現性を考慮し『可処分学習時間』を算定

第一に一週間分の『行動記録』を取ろう。これを基準に理論上可能な最大勉強時間を算出してゆくこととなる。実状に合わせ、勉強以外の行動も詳細に記録を残さなければならない。間違いのないよう、一日数回スケジュール帳などに記入するとよいだろう。ちなみに青稲塾の塾生は『Schedule』を活用するが、市販の手帳や、Googleカレンダーなどを利用してもらっても構わない。必ず記すべきは以下三点である。

  • 行動
  • 開始時刻
  • 終了時刻

第二に『行動記録』を参照しながら、学習に費やすことが可能な『最大学習時間』を計算しよう。その際、学習の自由度に照らして『自由学習時間』『制約学習時間』の二つに分類し、各曜日ごとにそれぞれを数えるとよい。

  • 『自由学習時間』とは?
    好きなものを好きなように学習可能な時間枠。進める勉強や、思考を必要とする勉強のために優先的に使用。
  • 『制約学習時間』とは?
    学習方法が限定的だが、工夫によって学習可能な時間枠。主に復習や暗記モノに使用。

『制約学習時間』の具体例は、高校生の場合に以下のようになるだろう。

  • 通学・帰宅中
  • 学校の休み時間
  • 食事中
  • 入浴中
  • 受験科目以外の授業中
  • 家事手伝いの間
  • ランニング・筋トレ中

たとえば「通学・帰宅中」なら、音声教材などの活用により、暗記モノの学習タイムに変えることが出来るだろう。「受験科目以外の授業中」も、道徳的には褒められたことではないが、受験科目のノートなどを教科書の下に忍ばせておくことで受験勉強に費やすことが可能となる。「休み時間中」に教材を見ることが難しい場合でさえも、友人との会話の合間に前夜の学習内容を思い出すようにすれば、いつでも復習タイムに変わりうる。このように学習方法の幅は制限されるが、それでも、工夫次第で意外と時間は作れるもので、これらを上手く活用することで、人によっては学習進度を倍増させることもあるだろう。

さて、自由度ごとに一週間の理想的な勉強時間を集計したら、次に試験日までの残り週数をカウントし、両者をかけ合わせよう。これこそが、その時点における理論上の『最大学習時間』ということになる。

最後に『可処分学習時間』の算定だ。というのも、先ほど『最大学習時間』を算出したわけだが、多くの人にとり、その全てがそのまま勉強に使えるわけではないだろう。「理論上は平日6時間勉強できる」と口にするのは簡単だが、勉学に慣れていない者ではせいぜい一日2時間が関の山だし、無理に続けようとしたところで過半数は慣れるより先に潰れてしまう。

よって、理論値を長期的に継続可能な数値に近づける必要があるわけだ。『最大学習時間』のうち、どの程度ならば実際に勉強時間が取れるだろうか?理論値を参考にしつつ、心理的に許容できる範囲を曜日ごとに考えてみよう。それらを再度集計して、残された週数とかけ合わせてみよう。(たとえば、「週の学習時間が12時間・残り40週間」ならば、リアルな残り時間は「480時間」ということになる)

さらに「人の行動にはミスがつきまとう」という事実も考慮しておきたい。あらかじめそれを想定することで計画の実現性を高めるわけだ。よってここからさらに二割減じることで、現実的な『可処分学習時間』としよう。(継続可能であろう学習時間が「480時間」ならば、あなたに残された現時点での現実的な学習時間は「384時間」ということになる)

さて、ここで理論上の『最大学習時間』と現実的な『可処分学習時間』との差に、あるいは自己の『可処分学習時間』の少なさに絶望する者もあるだろう。しかし、人は成長する生き物である。継続すれば、やがては必ず成長が見られるのだ。焦らず弛まず、継続しよう。そして、一定期間続けることが出来たら、その時点で再度この『資源明確化プロセス』を実行するといい。きっとその時点における『最大学習時間』と『可処分学習時間』との差は初めよりも縮まり、そして、それは今後の方針決定に大きく寄与するだけでなく、モチベーションの向上にもつながることだろう。

人はきまぐれで、なまけもの、そして根性なしである。しかし人はまた成長する生き物でもある。継続しよう。