theあり最上級とtheなし最上級の違い[青稲塾そこ知り英文法044]
問題
問題。以下の英文を、その違いがわかるように和訳しましょう。
- This lake is the deepest around here.
- This lake is deepest around here.
答え↓
- この湖はこの辺で一番深い。
- この湖はこの辺が一番深い。
解説
中学校では「形容詞を最上級で使うときは、直前にtheをつける」というルールを習いますが、これって何でか考えたことがありますか?ひとつのヒントが「形容詞を」という部分にあります。ご存知の通り、最上級で使える品詞は形容詞と副詞しかありませんので、↑で確認したルールは裏を返すと「副詞の最上級にはtheが付かない」ということになります。さて、それでは「なぜ形容詞にはtheが付き、副詞には付かないのか」ですが、実はこれ、厳密には形容詞に付いているわけでもないのです・・・。theが付いているのは形容詞の後ろに省略されている名詞なのです!
- That boy is the wisest in this class.
その少年はクラスで一番賢い。 - That boy is the wisest boy in this class.
その少年はクラスで一番賢い少年だ。
この2文が内容的にほぼ同じであることはわかりますよね?前者のように省略して書いたところで、後者と同じ意味だということは十分に伝わります。そして「誤解が生じない程度でバンバン省略!」が行われるのは言語の常であり、もちろんこの場合も例外ではありません。かくして「形容詞を最上級で使うときは、直前にtheをつける」というルールが出来上がるわけです。さて、ここからが本題。高校に入って比較を勉強すると「形容詞なのに、theをつけてはいけない最上級」に出会うことになります。
- Grace looks cutest in the dress.
Graceはそのドレスが一番かわいいよ。
なぜでしょうか?・・・もうおわかりですね。そう。形容詞の後ろに名詞が省略されているわけではないからです。実は先ほどの例文とは、使用されている形容詞の用法に違いがあるのです。theありの最上級(That boy~のように、名詞が省略されていると考えられる方)は 限定用法で、theなしの最上級(Grace looks~のように、名詞が省略されていないと考えられる方)は叙述用法で使用されています。形容詞の限定用法は名詞の恒常的な性質を表し、対比的・カテゴリー的なニュアンスが付加することが出来ます。対して、叙述用法は名詞の一時的な性質を表します。(形容詞の限定用法と叙述用法の違い[青稲塾そこ知り英文法015]参照)したがって、theあり最上級は他者との比較分類が基本となります。たとえば「その少年はクラスで一番賢い。」は「クラスの他の少年と比較して、最も頭がいい。」ということを表します。対してtheなし最上級は他者と比較しているわけではなく、単に一時的・状況依存的な状態を説明しているということになります。例を挙げると「Graceはそのドレスが一番かわいいよ。」は「そのドレスを着ているときに限って一時的に、一番かわいらしく見える」というわけです。
- That boy is the wisest (boy) in this class.
- Grace looks cutest (×) doing so.
それでは問題に戻りましょう。まずはthe deepestの方からですが、これはtheがあることから分かる通り、名詞省略、つまり限定用法で使用されています。この場合は他者との比較分類が全面に出た意味になりますので、「この辺にはいくつか湖があるわけだが、それらの中でこの湖が一番深い」という感じになります。端的に言うと「この湖はこの辺で一番深い」となります。
- This lake is the deepest around here.
対して後者はtheなし最上級です。したがって、叙述用法、一時的・状況依存的な状態説明な感じになるので、「この湖は、(この湖内の)この辺において、一番深くなる」ということになります。端的に言えば「この湖はこの辺が一番深い」となります。
- This lake is deepest around here.
類題
類題。以下の日本文を英訳せよ。
- 彼はこのチーム内で一番上手い。
- 彼は試合中が一番上手い。
答え↓
- He is the best in this team.
- He is best during a game.
本日のまとめ
- theあり最上級は他者との比較分類
- theなし最上級は一時的・状況依存的性質