不定冠詞+関係代名詞と定冠詞+関係代名詞の違い[青稲塾そこ知り英文法073]

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今日の「そこ知り英文法」は「不定冠詞+関係代名詞と定冠詞+関係代名詞の違い」についてです。関係代名詞を使うとき、先行詞の冠詞をどうするか悩んだ経験はありませんか?たとえば、「僕の飼っている猫」と言いたい場合、"a cat+関係代名詞"を使うべきか、それとも"the cat+関係代名詞"を使うべきか。この違いを理解するには、まず不定冠詞aと定冠詞theの違いから確認しましょう。より詳しく知りたい場合は→anotherとthe otherの違い[青稲塾そこ知り英文法008]。本日のキーワードは「複数中の一」と「唯一」。
前回の記事はこちら↓
anotherとthe otherの違いはこちら↓
「そこ知り英文法シリーズ」まとめ記事はこちらから↓

問題

問題。「それはミシュランガイドにも掲載されているレストランです。」を英訳すると正しいのはどちら?

  • It's a restaurant which is on the Michelin Guide.
  • It's the restaurant which is on the Michelin Guide.

答え↓

  • 前者。a。

解説

関係代名詞を使うとき、先行詞の冠詞をどうするか悩んだ経験はありませんか?たとえば、「これは、Billがイタリアで製作したカップです。」を訳すとき、以下のどちらの英文を書くべきか・・・。

  • This is a cup which Bill made in Italy.
  • This is the cup which Bill made in Italy.

文法テストで直接問われることのない知識なので、特に気にしたことすらない人が多数派な気がしますが、実は両英文にはハッキリと違いがあるのです。そしてその違いを還元すると、結局はaとtheの違いに行き着くことになるのです。ということで確認なのですが、aとtheがそれぞれ文中でどのような意味を持つか、あなたは知っていますか?anotherとthe otherの違い[青稲塾そこ知り英文法008]でも説明しましたが、aが表すのは「複数の中の一つ」です。

  • My mother is a teacher.
    私の母は教師です。(複数いる中の一人)
  • We had a full moon yesterday.
    昨日は満月でした。(月の表情の中の一つ。他にも半月とか)
  • There was a Mr. Paul to see you this morning.
    今朝、Paulさんとかいう方があなたを尋ねてきました。(Paulという名前を持つ人の中の不特定単数)

対して、theが表すのは「唯一。それ以外にはない」です。

  • My mother was the teacher in that small town.
    私の母はその小さな街でただ一人の教師でした。
  • There was the moon out of the window.
    窓の外に月があった。(世界に一つ)
  • He is the Paul Ward.
    彼があの Paul Wardだ。(噂に名高い、特定の。「〜といえば」)

以上のように、aは「複数の中の一つ」を、theは「唯一無二」を表すのですが、これさえ理解できればあとは簡単です。関係代名詞と絡むときも、同じように考えればいいのです。たとえば「私は日本製の自動車を所有している。」を考えてみましょう。

  • I have a car which was made in Japan.

日本製の車は世界に一つしかないわけではありませんよね。当然複数あります。その中の不特定の一つをピックアップし、それを所有している。つまり、「日本製の車は複数あるが、そのうちの一つを私は所有している。」ということを表したいわけですから、当然"a car"を使うわけです。簡単ですよね?

  • I have the car which a famous actor made.

それでは、この英文はどのような意味になるでしょうか?こちらの文では、a carではなく、the carが使われています。ということは、有名な俳優が車を作ったわけだが、彼が作った車はそれがただ一つであり、それを所有している。つまり「有名な俳優が作った唯一の車を所有している。」という意味になります。どうでしょうか?aとtheの違いを理解していれば問題ないですよね。それでは問題に戻りましょう。問題。「それはミシュランガイドにも掲載されているレストランです。」を英訳すると正しいのはどちら?

  • It's a famous restaurant which is on the Michelin Guide.
  • It's the famous restaurant which is on the Michelin Guide.

ミシュランガイドはフランスのタイヤメーカーであるミシュランによるガイドブックですが、当然掲載されているレストランは複数です。したがって、a「複数の中の一つ」を意味する前者が正解となります。

類題

問題。以下の英文をその違いがわかるように日本語訳せよ。

  • That is a girl who I love.
  • That is the girl who I love.

答え↓

  • 「あれが、僕が好ましく思っている女の子のうちの一人だ。」
  • 「あれが、僕が愛している女の子だ。」

本日のまとめ

  • aが示すのは「複数の中の一つ」
  • theが示すのは「唯一」
  • 関係代名詞と絡もうと↑を基準に考えるべし!

10 thoughts on “不定冠詞+関係代名詞と定冠詞+関係代名詞の違い[青稲塾そこ知り英文法073]

  1. 英語に苦戦し、勉強中のものです。
    冠詞についてより知りたくて色々なサイトを見てましたらこちらを見つけました。

    aが示すのは「複数の中の一つ」とのことですが、「one of the 複数形」も同じように感じます。

    That is a girl who I love.
    That is one of the girls who I love.

    ではどんな違いがありますか?

    1. TAKUさん。はじめまして。塾長です。ご質問ありがとうございます。現時点で調べられるだけ調べ、まとめてみました。参考資料は「Practical English Usage」「わかりやすい英語冠詞講義」ネイティブの友人などになります。

      結論から言うと、両者とも似たような感じになりますし、文法的には適格の範囲内になりますが、状況によっては後者の方がより自然な印象を与えるようです。

      違いとしては大きく2点あります。まずひとつめは、数に関して、前者の英文は暗示的で後者は明示的であるという点。そしてふたつめは、場合によっては、前者の英文は曖昧な印象を与えてしまう可能性があるという点です。

      aはanに、anはoneに由来するという歴史を紐解けば、両者に「1」という共通点があるのは頷けますが、使用にあたっては何を対比概念に取るのかが微妙に異なります。

      aは「確定していたり[the pen]、複数[pens]ではない、つまり「何か不定のものがそこにひとつ存在すること[a pen]」を表すときに使用されます。対してoneは、たとえばtwo,three,millionなどのような(あるいはa lotとかに対してのonly的な場合もありますが、)「他の数ではなく1であること」を表したいときに使用するのが基本です。

      この根拠ですが、たとえば”a hundred”と”one hundred”は両者とも適格なのに対し、”two thousand one hundred”とは言えても”two thousand a hundred”とは言えないところに求められます。”Let’s take a taxi.”は「タクシーで行こう。」ですが、”Let’s take one taxi.”となると「(二,三台ではなく)タクシー一台で行こう。」といったコンテクストが見えてきます。aはoneに由来する語ではありますが、数を全面に押し出す語ではないのです。

      違い二点目ですが、まず前提として、aは”不定”を表し、制限用法の関係代名詞節は”特定”を目的として使用します。となると、したがってこの2つは基本的に相性が良くありません。よって、ちぐはぐな印象をときに与えてしまうようです。イギリス人の友人に訊いたところ「文法的にはおかしくないが、前者の方がよりvagueに感じられる。特に話し言葉では後者の方が用いられる傾向がある。」と表現していしました。後半部分に関しては私見ですが、会話中は即興性が必須となり、滑らかなコミュニケーションを行うためには、曖昧さが嫌われるということなのだと思います。

      さて、長々と書き連ねてしまいましたが、つまるところ、実用面においては、後者の表現をする方がbetterであるということになるかと思います。我々日本人にとって冠詞関係は本当に難しいですよね・・・。英語学習がんばってください!

  2. お世話になっております。
    返信が遅くなりまして大変申し訳ございません。
    また細く説明いただきありがとうございます。
    よく理解出来ました。

    追加で質問ですが、theが表すのは「唯一。それ以外にはない」とおっしゃってます。

    My mother was the teacher in that small town.
    私の母はその小さな街でただ一人の教師でした。
    I have the car which a famous actor made.
    有名な俳優が作った唯一の車を所有している。

    上記の例文もとてもわかりやすく勉強になりました。
    では、例ならって下記の文を作成したとき

    Brazil is the country which is on the other side of the earth.
    (日本から見て)ブラジルは地球の裏側にある唯一の国だ。
    という意味になるということでしょうか?

  3. 大変申し訳ございませんが、もうひとつ教えてください

    My mother was the teacher in that small town.
    私の母はその小さな街でただ一人の教師でした。
    これを
    私の母がその小さな街のその(例の)教師でした。
    という風に「ただ一人」ではなく、「その、例の」という風に訳すことは出来ませんか?

    なぜなら
    I know the boy who lives in New York.
    私はニューヨークに住んでいるその少年を知っている。
    という風に訳す文もあるからです。

    Theをどのような時に「たったひとつ」と訳すか「その、例の」と訳すかを、決めたらいいでしょうか?

    1. いえ、なりません。あくまでもtheは「唯一」を暗示するものであって、明示するものではありません。
      日本語でも同じですが、何かを言葉にするときは、まずもってイメージが先行すると思います。表したい状況、思想が頭にぼんやり浮かび、はじめてそれを言葉に変換する。多くの場合、言葉は言葉として単独であるのではなく、イメージの代用品と言えるでしょう。そして、theに関しては、「君の頭の中にも[唯一]で浮かぶよね?あれだよあれ、一つしかないじゃん」というイメージが、頭の中でぼんやり像を結んだ結果、それを口にするときに使用されるということなのだと思います。

      紙にペンで円を描き、その中に点を一つ置いてください。次に、もう一つ違う円を描きます。こちらはその中に点を複数個置き、さらにその一つに無作為に印をつけてください。前者がtheで、後者がaのイメージです。

      実用的には、以下のように考えてはいかがでしょうか。「複数中の不特定単数」を明示したいのであれば”one of 複数形”を、「唯一」を明示したいのであれば”the only 単数形”を使用する。対して、暗示したいというか、「特にそこに焦点を合わせたいわけではないけれど、でも何かしら冠詞がなくては困るなぁ」となった場合に、頭に複数同種のものが浮かぶタイミングであれば”a 単数形”を、そうでなければ”the 単数形”を使用する。どうでしょうか?

      ちなみに、イメージと語順に沿って、思考過程を書いてみると次のような感じに近いです。

      My mother was the teacher in that small town.
      私の母がいるだろう?それでさ、あの小さな街の教師っていえば、君の頭にも一人浮かぶと思うんだけど、私の母はそれなんだ。

      My mother was the only teacher in that small town.
      私の母がいるだろう?それでさ、あの小さな街の教師っていえば、一人しかいないわけだけどさ、私の母はそれなんだ。

      I have the car which a famous actor made.
      僕は所有しているんだ。とある有名な俳優が作った車っていえば、君の頭にも一つ思い浮かぶと思うのだけどね、それを所有してるんだよ。

      I have the only car which a famous actor made.
      僕は所有しているんだ。とある有名な俳優が作った車っていえば、一つしかないわけどさ、それを所有してるんだよ。
      ※意味がちぐはぐですね。

      Brazil is the country which is on the other side of the earth.
      Brazilってあるじゃん。そんでさ、地球の裏側の国って言ったら、おまえの頭にも一つ思い浮かぶと思うんだけどさ、Brazilはそれなんだよ。

      Brazil is the only country which is on the other side of the earth.
      Brazilってあるじゃん。そんでさ、地球の裏側の国って言ったら、一つしかないわけどさ、Brazilはそれなんだよ。
      ※現実的にはおかしな文ですね。

      I know the boy who lives in New York.
      私、知り合いなんだ。ニューヨークに住んでいる男の子っていえば、あなたの頭にも一人浮かぶと思うんだけど、その男の子と知り合いなの。

      I know the only boy who lives in New York.
      私、知り合いなんだ。ニューヨークに住んでいる男の子っていえば、一人しかいないんだけど、その男の子と知り合いなの。
      ※現実的にはおかしな文ですね。

      「例の」というのも広義には「一つに絞られること」と同義であると解釈してください。たとえば「例の件なんだけどさ・・・」と会話を始めるとき、話者の頭には「相手もきっと何の件かわかるだろうな。きっと一つに絞れるよな」というイメージが浮かんでいることと思います。それをどう訳出すべきかは、コンテクストを踏まえて決定すればよいのではないでしょうか。

      本来暗示的な内容を、説明のために無理やり明示的に訳出したがゆえに、逆にわかりにくくなってしまったのかもしれませんね・・・。
      ご指摘ありがとうございました。当記事、あるいは他の記事内で他に意味がわかりにくい箇所はありますでしょうか?

      1. お忙しい中、お返事いただきありがとうございます。

        定冠詞とは「本当に」唯一無二ではなく、「話し手と聞き手が共有した」という意味での唯一ということなんですね!
        訳し方まで教えていただいたことで、理解できました。
        この解釈ができたことはとても大きな前進です。

        1. 早速勉強したことを実践してみたいと思います。
          先生に教わったアドバイスにならって以下のよく見かけるような文をつかってみたいと思います。
          This is the letter that Tom wrote yesterday.

          「君はトムが昨日手紙を書いていたことを知っていると思うけど、それがこの手紙なんだ」
          くらいのニュアンスでしょうか?

          1. こんばんは。仕事が立て込んでいまして、少々時間が掛かってしまいました。もし、早めの対応期待されるようでしたら、Skype等でも授業を行っているので、入塾をご検討いただければ幸いに思います。

            さて、ここから回答になります。

            まず一点。ちょっと細かいですが「話し手と聞き手が共有した」ではなく、「[話し手と聞き手が共有しているだろう]と話者が考えた」というのが正しいです。言葉は現実世界ではなく、話者の主観を反映します。話し手が話す以上当然ですが。

            ここから本題です。

            その訳出だと、theの特定が”Tom wrote yesterday”に及んでいるような印象を受けるのですが、もしそうだとしたら若干異なります。確かにTomが書いたことを知ってはいるでしょうが、厳密にはtheはletterに掛かっています。

            おそらく、直前に話していたか、あるいはそれ以外の何らかの特定理由があり、それを前提として「これがその手紙なんだよ(君も思いつくだろう)」という流れです。あくまでも、「君も一つ思い浮かぶよね」は「手紙を」です。

            ただし、Tom以下は限定用法、つまり「区別、特定しやすくする情報」であるので、この部分は「何の手紙について触れているのか」を相手が理解しやすくする情報だと言えます。なので、結果的にはもちろん相手もそれを知っている前提に立っているわけではありますが。

            さて、ではこれがどんなタイミングで出てくる文なのか。これについても考えてみましたが、話者には以下のような思考が働いたと推察されます。

            「これが(以前に話した)その手紙なんだよ。(君も思いつくだろう?え、思いつかない・・・のか?あれだよ!)Tomが昨日書いたやつさ。(情報量増やせば思いつくだろう)」

            文脈中の位置づけとしては、何か新しいことを導入するのではなく、既出事項を確認しているタイミングかと思われます。

  4. お忙しい中、お返事いただきありがとうございます。
    大変勉強になりました。
    定冠詞の理解を深く知り得ることが出来ました。

    1. お役に立てたようで何よりです。また何かありましたら、ご連絡ください。
      それでは、英語学習がんばってください。

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