定着の心得(自学の心得その参)
今回で自学の心得シリーズは終了です。今回も情報盛り沢山。長くなりましたが、参考にしてくれると嬉しいです。
前回は習熟の心得(自学の心得その弐)について説明しました。やると決めたテキストを効率的にマスターしてゆく。そのために意識すべきことを順を追って説明しました。そのプロセスは、大きく選別・理解・再現に分かれるわけですが、それぞれ具体的に説明できますか?わからないときは上記リンクから確認しておきましょう!
閑話休題。今日のテーマは「定着」についてです。学習したことを効率よく残してゆくために知っておいてほしいこと。忘却を防ぐための工夫について、いくつか紹介してゆきます。さて「一生懸命勉強したはずなのに、すぐ忘れてしまう・・・」なんて経験ありませんか?特に「テスト前は完璧だったのに、その後一週間経つと全く思い出せない」だとか「昨日必死に英単語を100個覚えたのに、今日は半分しか思い出せない・・・」みたいな。
これらは勉強ビギナーによくある、しかし深刻な悩みなわけですが、原因はどこにあるのでしょうか?もちろん、人の数だけ問題点もあるのでそれを1つに絞ることは難しいのですが、それでもあえて共通点を探すなら、こういう人には、その原因を「頭の悪さ」に求める人が多い気がします。しかし実際に、こうした人たちの能力が極端に劣っていることは稀です。というか、色々なことを忘れていくのが脳のデフォルトであって、これまでの知識の積み上げ量については差があるかもしれませんが、それでも記憶力そのものに関してはさしたる差はないのです。学んだことを忘れてしまうのはあなただけではなく、皆似たようなもの。記憶力が良い人とそうでない人の差は、まずこの事実を認識し、そしてそれに対して対策を講じているかどうかということが大きいのではないでしょうか。デキる人は、忘却を受け入れ、それを防ぐためのシステムを上手く構築することで忘却を迎え撃ち、効率よく知識を貯めこんでゆきます。デキない人は、自分の記憶力に絶望し、そこで諦めてしまいます。こういったところから、差が生まれてゆくのです。
それでは、どのように対策を講ずればいいのか?最低限押さえておくべきことが3つあります。集中・復習・睡眠の3つです。人は意識を集中させてものを、何回も反復したものを大切だと感じ、睡眠中に強く記憶に刻み込もうとします。定着力を高めたいのであれば、これら3要素についてしっかりと学ぶことで効率化を図りましょう。
集中(定着の心得その壱)
定着力を上げるにはまず集中力の向上が大前提です。集中を欠いた勉強は、穴の空いた容器で水を汲むのに等しく、時間だけが無闇に消費されてゆきます。集中力向上に一番効果があるのは、集中状態を断続的にでもいいから続けることですが(毎日席につき、テキストを開き勉強する。初めは一日20分が限界でも、翌日には30分、一週間後には45分、二週間後には60分。集中して学習できる時間は、経験に比例して段々と、でも着実に伸びてゆきます)意識的に補強することもできます。日頃からスイッチ・チョイス・タイムアタックを利用して、意識の分散に抗いがいましょう。
1.スイッチ
のんびりモードから勉強モードへ切り替えるための工夫。本腰を入れて勉強タイムに入るための儀式のようなものです。たとえば、深呼吸で気持ちを整えたり、軽い運動をして脳への血流を促進したり、あるいは簡単な問題を高速で10題計算・知ってる英文を早口音読・漢字の書き取り・昨日やったことの復習など、すでに知っていること・簡単なこと・比較的好きなことなどに高速で取り組むこともオススメです。(ぼ〜っとした頭をシャキッとさせることや、本腰を入れた勉強への助走、勢いをつけることが目的なので、難しすぎて手が止まるものは避け、気分よくサクサク出来るものを選びましょう)他にも、散歩、コーヒー、洗顔など、自分的に切り替えができるものならなんでも構いません。自分流のスイッチを作りましょう。(初めは効果がなくても、クセをつけるとパブロフ的に効果が出てきたりもします。続けることが大切!)
2.チョイス
「いざ勉強を始めたは良いが、途中で気が散ってしまい、20分しか続かない・・・」これを防ぐのに有効なのは「どこで何をやり、やらないのか?」「何が必要で何が不要か?」などを、あらかじめ決めておくことです。たとえば「電車の中では英単語をやり、家に帰ってから初めの60分は英語長文に取り組む」「そのために必要なテキストだけを机上に出しておき、スマホや漫画など不要なものは別室に置いておく」などとしておけば、一々何をやるのかに気を取られる必要もなく、合間合間でズルズル他のことをしてしまうリスクも減らすことが出来ます。やることリストならぬ、やらないことリストを作るのも有効です。やってしまいがちだけど、やってはいけないことを毎日箇条書きにして、机の上にでも貼っておくとよいでしょう。(たとえば「自室にスマホ・漫画を持ち込まない」「得意科目は勉強しない」「復習が済むまで次のページを見ない」など)
3. タイムアタック
習熟の心得でも即答の大切さを話しましたが、時間を意識することは集中を保つことにも一役買ってくれます。「36ページの前半部分の再現訓練を30分以内で終わらせる」のように、詳細なタスクに対して適した時間制限を設けることで、勉強効率を上げることができます。勉強の目的は、今よりも賢くなることです。勉強すること自体には意味はありません。同じ時間内にどれだけ多くのことを学び取れるか、身に付けることができるかが勝負です。勉強のための勉強ではなく、賢くなるための勉強を心掛けましょう。所要時間をどうするかについては、経験を積む中で塩梅がわかってきます。初めはある程度大雑把でも、タスクと制限時間をしっかりと課して始めるように心掛けましょう。
復習(定着の心得その弐)
人の脳は効率的です。生存に必要な情報を優先的に記憶し、必要のない情報はさっさと忘れてゆきます。その判断基準のひとつは頻度です。日常生活を営む中で繰り返し出てくる知識こそ、生存に大切な情報だと脳は判断します。だからこそ、知識をどんどん記憶してゆくには、何度も繰り返し、脳を勘違いさせることが必要なわけです。それ以外に、知識を自由自在に応用できるほどに取り込むこと、つまり自分の血肉とすることはできません。ところで、効率よく脳をだますにはいくつかコツがあります。100%・1D1W1M・復習タームを考慮し、万全の復習システムを構築しましょう。
1.100%
復習する時もその一回一回を大切にし、毎回完璧にして次に繋げるようにしましょう。「後で何回も復習するから、今はほどほどでいいや」という考え方ではいつまで経っても完璧に身に付くことはありません。初回勉強時に100%だったとしても、翌日には2、3割忘れてしまっているのが普通です。初回が完璧になっていないのなら、言わずもがな。復習であろうと気を抜くことなく、満点スラスラを基準に完璧にしましょう。ちなみに、これはモチベーション管理の上でも大切です。8割程度で終わらせると強い達成感は得られず、長期的に見てやる気は減退してゆきますが、スラスラ完璧になるまでやり切ると、脳は強い達成感を感じ、やる気も湧いてきます。復習を完璧にこなして、次への推進力としても利用しましょう。
2. 1D1W1M
一回一回を大切にし、かつ適切なタイミングで3回程度復習すれば、だいたい1年間は記憶を保持することができます。あるいは、少なくとも、試験直前に見直しをすればすぐに思い出せるレベルにまでは持っていくことができます。適切なタイミングの目安としては「ちょっと忘れかけてるかも」を基準にするといいですが、計画の立てやすさも考慮すると、翌日・一週間後・一ヶ月後(1d/1w/1m)のタイミングで復習すると良いでしょう。(たとえば、4月1日にやったことを4月2日・4月8日・5月1日を目処に再チェックし覚え直しましょう。)あるいは、1mを4weekとして計画を立ててもいいでしょう。なお、その日の進める勉強の直前に復習を組み込むと、上で説明したスイッチとしても使えるのでオススメです。
3. 復習ターム
消化不良を防ぐための緊急避難。1D1W1Mを目安に進めていくと、計画によっては復習スケジュールがかさばり、きつくなってくるタイミングがあるかもしれません。そんなときには、先に進める勉強は保留し、復習のみを行う期間を設けましょう。焦らずにやったことを確実に残すのが勝ちパターンです。どんどん先に進めても、どんどん忘れていくのでは何の意味もありません。覚えたものを完璧にするのが最優先。「勉強してるのに身に付いていないかも・・・」と消化不良を感じるときには、まずしっかりと残すことを第一に考えましょう。ちなみに、以前話したバッファは消化不良を防ぐための予防策、ここで話したことは、予防が上手くいかなかった際の緊急対策みたいなイメージです。
睡眠(定着の心得その参)
「これは重要だ!」と脳が判断した情報を、長期的に引き出すことができる形に加工し、定着させる。この作業が行われるのは睡眠中です。さらに、睡眠は日中のコンディションに大きく影響します。肉体的・精神的に充実していなければ、勉強を長時間続けることも、短期的に集中の強度を上げることも不可能です。そうした意味で、睡眠は勉強に大して非常に大きな意味を持っています。しかし、勉強との関係で語られることがあまりなく、一般的にはあまり重視されません。あなたはどうでしょうか?キーワードは睡眠時間・朝型習慣・パワーナップの3つです。眠りを改善し、定着力をアップしましょう!
1. 睡眠時間
未成年に必要な睡眠時間については、アメリカ睡眠医学会が提唱しているものに、「小学生で9〜12時間、中高生で8〜10時間」というものがあります。さらに、人の睡眠は基本的には90分で1つの周期であるため、その倍数(7時間半・9時間・10時間半など)で起きるようにすると、すっきり目覚めやすい傾向があります。これらの事実と自分の生活スタイルを考慮して、睡眠時間を決めましょう。当面はその時間で続けて、日中のコンディションがあまり優れないのであれば、睡眠時間を変えてみるなど、何度か試行錯誤してみましょう。自分に合った睡眠時間を取ることは、記憶力の向上につながり、日中の勉強をしっかりとこなす土台にもなります。日中ぼ〜っとしたり、体調を崩したりすることのないよう、しっかりと自分に合った睡眠時間を確保しましょう。
2. 朝型習慣
夜中ではなく、朝に勉強するクセをつけましょう。試験は朝9時から10時頃にかけて始まります。移動時間や準備などを考えたら、その二時間から三時間前には起床する必要がありますよね。「いつもは8時起きなのに、その日だけは6時起き」というのではなかなか体が追いついてきません。朝から最高の状態に持っていけるよう、日頃から体を慣れさせておく必要があります。その上、夜型の生活をしている人は、同じ睡眠時間で朝型の人よりも「うつ・肥満・低学力」になりやすい傾向があるという研究結果もあるようです。夜型の人には辛いかもしれませんが、せめて受験生の1年間だけでも朝型生活を習慣にすることをオススメします。
3.パワーナップ
power_nap。活力を取り戻し、効率を上げるために取る20分程度の仮眠のこと。上で話したように、アメリカ睡眠医学会推奨の睡眠時間は最低でも小学生で9時間、中高生で8時間です。しかし、これを現代日本で実際に行うのはなかなか難しい現状があります。塾・部活で忙しい上に、社会全体が24時間化していることもあり、実際は小学生で8時間・中高生で7時間程度にになりがちです。その上、人は基本的に午後二時前後になると眠くなるようにできています。そもそもとして慢性的に睡眠時間が足りない上に、眠くなるように出来ているわけですから、これで午後に体育でもあろうものなら・・・。これを上手く回避し、午後を有意義に使うために、パワーナップが有効です。たとえば、昼休みとか、帰りの電車内とか、帰宅してすぐとか、あるいは夕食の後とかに、一日一回20分程度の仮眠を取りましょう。強烈な眠気の中、睡魔との格闘に意識の大半を割き、船を漕ぎつつ勉強するのと、すっきりした状態で勉強するのとでは、学習効率は雲泥の差です。ちなみに、カフェインは摂取後30分程度で効いてくるので、パワーナップを取る直前にコーヒーなどカフェインが豊富に含まれるモノを摂取しておくと、スッキリと目覚めやすくなりますよ。