段取りの心得(自学の心得その壱)

段取りの心得今回の記事はかなり長くなってしまいましたが、重要な事がたくさん詰まっています。何度も読んで参考にしてくれると嬉しいです。
まずは前回の確認です。試験日の実力・自学の心得・段取り力の定義をそれぞれ説明できますか?わからないときはこちらから確認しておきましょう。
さて、本題。受験勉強は「ゴールが遠いこと・時間が掛かること・ルートが複数あること・自分に決定権があること・達成の喜びが大きいこと」などなど様々な点で旅に似ています。もしあなたが行ったことのない土地を旅することになったら、まず何をするでしょうか?私なら実際に旅に出る前に、事が上手く運ぶように色々な準備、つまり段取りをします。まずは、自分だけの地図を作ることから始めます。ありものの地図に目的地を書き込み、現在地を確認し、使えそうな道をいくつかピックアップし、その中から自分に最も合った道を選びます。現時点で予想できることにはその対処法を考え、ある程度アクシデントに備えたら実際に旅に出ます。それでも旅の途中は何かしら問題が起こるものです。順風満帆で、何も問題が起きないことはまずありえません。その際には計画の修正を強いられますが、これを上手くやってのけることで、「良い旅だったなぁ」と締めくくることができるわけです。さてさて、こうした流れは勉強にもそのまま当てはめることができます。まずは分析から始め、それらの情報をもとに計画を立て、実践の中で調整を加えてゆく。こういったことがしっかりとできて、初めて長期的な戦いの中で結果を出してゆくことができます。

分析(段取りの心得その壱)

分析(目標・実力・リソース)第一にやるべきは自分自身と、自分の置かれている状況を深く分析することです。すべてはここから始まります。ここで手を抜けば、自分に合った計画など立てようもありません。どれほど立派に見える建物でも、土台が貧弱なら脆いものです。「敵を知り己を知れば百戦危うからず」とも言います。目標・実力・リソースを現時点で出来る限り明確化し、より良い計画づくりに役立てましょう!
 
1. 目標
まずは目標を明確にしましょう。「あなたの志望校はどこですか?」「どうしてもその学校に行きたいですか?(これは特にしっかりと考えましょう。目標が定まらないとうまくいかない時にずるずると目標を下げてしまいがちです)」「試験本番は何月何日ですか?」「入学に必要な合計点はいくらですか?」「どんな形式の問題が出ますか?」「どの教科で何点確保する予定ですか?」最低限このくらいの質問には答えられるようにしましょう。
 
2. 実力
次に実力をはっきりさせましょう。受験勉強の成否は、目標と実力をどれほど近づけることができるかにかかっています。よって、ここを大雑把にやってしまい、実力を測り間違える(特に実力を過大評価する)と後々痛い目を見る確率が上がります。特に、苦手な分野はないか胸に手を当ててよく考えてみましょう。大学入試なら、たとえば公立高校の入試問題・センター試験・志望校の過去問などに取り組み、何ができて、何ができないかを細かく掴むようにして下さい。偏差値だけをあてにするのは絶対に止めましょう。「不定詞の特に完了不定詞がわからない・・・」「比較の慣用表現が全般的に苦手・・・」「中学レベルは良いが、高校レベルの英単語がわからない・・・」最低限この程度には把握しておく必要があります。
 
3. リソース
目標と実力の差をおぼろげながらも認識し、なんとなくやることが見えてきた。次に行うのは、その差を埋めるために使えるリソースをはっきりさせることです。単純計算で、現時点から試験日まで何週間あるのか。一週間で何時間勉強できるのか。それらを掛け算すれば限界勉強時間を出すことができます。(週に30時間勉強を50週間続けると、限界勉強時間は1500時間)しかし、限界ギリギリまでできる人は稀です。計画が破綻しないように、その値から1~2割引いておき、精神的な意味でも確保されうる実質リソースを出しておきましょう。(限界勉強時間が1500時間なら、実質リソースは1200〜1350時間といったところでしょう)計画を立てる上では、この実質リソースを教科ごとの配点や特性、分析データに合わせて割り振ってゆくことになります。

計画(段取りの心得その弐)

計画(セグメンテーション・スモールステップ・バッファ)分析が進み、ある程度情報が出揃ったら、それらをもとにして計画を立ててゆきます。受験勉強で言う良い計画には3つの条件があります。合目的的(目的に合っていること)・実行可能・最短距離の3つです。これらを同時に満たす計画を作るには、分析結果とともに、セグメンテーション・スモールステップ・バッファを意識しながら計画を立てると良いでしょう。

1. セグメンテーション
現在から試験日までを細分化して捉えること。たとえば、残りちょうど一年で受験の場合、これを4分割して3ヶ月ごとのquarterly_planを立てる。この段階では、ある程度大雑把に「基礎力養成→応用力養成→総復習&穴埋め→志望校対策」のような感じで問題ない。これをもとに、monthly_planを立てる。ここではテキストレベルで考えると良い。初めの三ヶ月の目標を基礎固めに置いたのであれば、それを実現できるテキストを選ぶ。「単語集を毎日やる。英文法の基礎問題集を2ヶ月でマスターし、次の1ヶ月で英文解釈の基礎に踏み込む」のように計画しよう。そして、最後にweekly_planを立てる。一週間の時間割を決め、日々の課題の量を割り振ろう。「英語は毎日一時間半前後やる。一日に英文法テキストの単元を2つ分を絶対に完璧にし、翌日には15分くらい復習時間も取る」こんな感じで。
初めから1年間分の週間目標を立てる必要はないが、1年分のquarterly_plan・三ヶ月分のmonthly_plan・一月分のweekly_planくらいはあらかじめ決めておこう。自分がしっかりとやり切れているのかを多角的に判断する材料が増え、後々の計画が立てやすくなる。

2. スモールステップ
やることを細分化して捉え、できることから段々と積み上げてゆくこと。たとえば、「英語を得意にしたい!」という目標があるとき、このままではあまりにも漠然とし過ぎていて対策も講じにくい。したがって、そのために何をすべきか、自分に足りないものはなにかを具体的に考えるわけだが、読解・文法・構文・語彙など、英語を得意にするためにすべきことは色々ある。まず手を付けるべきはどこだろうか。満遍なくできないのであれば、最初にマスターすべきは語彙と基礎文法だ。では文法を得意にしたいとき、どの単元の学習が必要だろうか。たとえば過去完了がわからないとして、現在完了はつかめているか?現在形と過去形の違いや、現在進行形と過去進行形の違いは理解してるか?知識には繋がりがある。1つの知識を理解するためにはそれを可能にする土台の知識がある。だからこそわからないことがあるときには、その理解に必要な既習事項を遡って捉える姿勢が必要。できるところからコツコツやろう。
こうしたことを念頭に置けば、土台がなくて解けない問題にムダに時間を使うこともなくなるし、日々取り組むテキストや、問題の一つ一つが全体の中でどういう意味を持つのかに気付くこともできるし、目的に合った力をつけることもできる。(単語のための単語暗記ではなく、読解のための単語暗記)要は計画がぐぐっと効率的になります。

3. バッファ
緩衝材。受験で一定以上の結果を出すには、それなりの期間コンスタントに取り組む必要があります。その期間はもちろん人によりけりですが、大学受験となると1年程度が一般的でしょう。1年間も勉強を続けていると、それなりに知識量も増えてきますが、同時に新しいことに埋もれてしまう知識も出てきます。もちろん、埋もれさせたままの人は十中八九落ちます。やったことは確実に残さなければなりません。そうなってくると、後半になればなるほど復習すべきことがかさばってきます。これを見越して計画を立てなければ、余程の消化力がある人以外は計画が破綻します。焦って進み続けるのではなく、ときに立ち止まり、残す勉強のためだけに使う時間をあらかじめ見積もっておきましょう。記憶力や、分量にもよるが、たとえば毎週日曜日は1週間分復習するとか、5の倍数の週は直近4週間分の復習をするとか、復習のみに全力を傾ける期間を挟み込んでおくと、計画の実現性がぐっと高まります。

調整(段取りの心得その参)

調整(実行・チェック・修正)計画は立てた。しかし、進めてゆくにつれ、それをそのまま使い続けられることもあれば、そうでなくなるときも出てきます。状況は絶えず変化します。自分自身の実力が上がることで、出題者が求めていることを分析する力も向上するでしょう。初めは要らないと思っていたことが必要になることもあれば、その逆もまたありえます。本当に役立つ計画にするために、実行・チェック・修正のサイクルを回し続けましょう!

1. 実行
あなたがどれほど良い計画を立てたとしても、実行しなければ何の意味もありません。いや、それどころか、行動に移さない計画なんてむしろマイナスです。ある程度納得のゆく計画が立ったら、その瞬間からそれを実行しましょう。「実行!実行!!実行!!!」です。自分の案が合っているのか心配になる気持ちはわかります。しかし、取り組まなければ、それを判断することさえできない。そのための判断材料すら手に入りません。適当なことしかできなければ、悪い結果の原因が計画の所為なのか、他にあるのか判断がつかなくなります。だからこそ、これと決めたら、全力で取り組みましょう。現時点の自分が最良と思って立てた計画です。自分を信じて徹底的にやりましょう! 

2. チェック
ある程度時間(一ヶ月~三ヶ月程度)を費やしたら、自分のやっていることが正しいのかチェックしてみましょう。たとえば、使用した教材の定着度テストをしたり、模試を受けてみましょう。ある程度実力が付いてきたら、ぜひ過去問の解き直しも行って下さい。わかるものは増えているのか。予定通りの伸びか。方向性は合ってそうか。色々と考えてみましょう。計画を実行してゆく中で分析力も向上し、初めとは違うものが見えてくることもあります。めんどくさがらずやりましょう。こうしたことを定期的に繰り返すことで、1年間見当違いのことに時間を費やしていた…なんて可能性が相当低くなりますし、モチベーションアップにもつながります。

3. 修正
チェックの末、予定と実際に違いがあることや、計画に不備があることに気がついたら、その段階で計画の修正を行いましょう。定着度が低いのであれば、復習時間の増量が必要でしょう。単語帳を一冊覚えきり、求められているものが他の能力(たとえば文構造の把握力)だったと気付くこともあるかも知れません。もしかしたら、自分の思った以上に進んでかつ効果も上がってるということもなきにしもあらずです。いずれにせよ、計画と実際が乖離してるなと感じるときには、それに気付いた時点でフレキシブルに計画を修正しましょう。